妄想映画プロダクション

妄想した映画を書いていこうと思っています。

『アナと雪の女王』にみる映画館生き残りの鍵

 

 

特に意味もなく映画を妄想したいが為にブログを立ち上げましたが、果たして誰が読んでいるのでしょうか?

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さて、今回は早速番外編です。

 

最近、GWに行われた『アナと雪の女王』(みんなで歌おう歌詞付版)の映画館上映の批判記事や問題点を指摘する記事などをよく目にするようになりました。

「アナと雪の女王」上映中に歌ったら怒られた ディズニーの「みんなで歌おう」は本当に成功したのか? : J-CASTニュース

 

私としては、確かに国民性にはミスマッチな気もしますが、今後映画館が生き残る鍵はここにあると考えています。

※独立系のミニシアターの場合は別事情が多いで、この場合一般的なシネコンを想定しています。

 

その理由としては

★①3D映画は映画業界の救世主とならない?

★②ホームシアターの発展

★③体験型映画体験という可能性

 

★①3D映画への期待

2005年3月、ラスベガスで開催された映画関係者向け展示会ショーウェストにて、キャメロンはジョージ・ルーカスロバート・ゼメキスら著名監督と共に、観客の映画館離れ問題についてシンポジウムを行い、打開策としてデジタル3D映画の推進が打ち出されました。映画界を代表する面々はホームシアターとの差別化として、大画面であること、優れた音響設備であること、そして3D映画であることが打開策になると考えたのです。もちろん、3D映画だけになるという意味ではなく、映画館に人を呼ぶことができれば他の作品も相乗効果で観客が増えると予想したのです。

 その4年後の2009年、3D映画の幕開けとなるキラーコンテンツ、映画『アバター』は興行的に大成功をおさめました。そして、その後も似非3Dも含めた3D映画はヒットを飛ばしました。3D映画は鑑賞料金が上がるので、その分興行収入も上がり、歴代興行収入記録更新などという言葉がよく聞こえるようになってきました。もちろん2008年『ダークナイト』以降、IMAX規格(残念ながら、日本のIMAXは標準規格ではないですが…)での映画上映も全世界で増えたので、その分も上乗せされています。

 

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歴代20位の作品中3Dで公開された作品は11本で、IMAX上映も含めると14本になります。更に、上記の数字に含まれていない『タイタニック』『ジュラシックパーク』も近年3D上映されたので7〜8割は特別鑑賞料金の映画となります。ですので、興行収入は歴代記録更新とニュースになっていますが、この特別料金とグローバル展開(中国でのヒットなど)が要因として大きく関わっており、純粋に映画観客が取り戻せたのかというと、正直なところ分かりません。結局のところ、グローバル展開による新規開拓と料金増が興行収入増の要因であれば、3D映画が《映画館離れ》の問題解決にはなっていない気がします。

 

行き過ぎたハリウッド商業主義 スピルバーグ&ルーカスの“爆弾発言”で物議 (1/6ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)

一方、ルーカス監督も「映画よりいまはケーブルテレビ(のドラマ)の方がはるかに冒険的だ」と話し、ハリウッドが極度の大作重視に傾いた結果、没個性に陥ったとの考えを強調。 続けて「これから映画館の数は激減し、生き残れるのは多くの魅力を持つ大規模な映画館だけになる」と明言するとともに「(爆発的に普及する)ホームシアターと差別化を図るためにも、映画ビジネスは高級路線を取らざるを得なくなり、映画鑑賞という行為が高級化する。映画のチケット代金は50ドル~100ドル(約4700円~約9500円)、あるいは150ドル(約1万4000円)に値上がりし、ニューヨークのブロードウェー・ミュージカルやアメリカン・フットボールの試合を楽しむような感じになるだろう。そして、ブロードウェー・ミュージカルと同じように、同じ映画が1年を通じて公開されるようになる

 

 加えて、3D映画ヒットがもたらした弊害を映画界の重鎮が問題視しています。

今や興行収入は世界的にヒットすれば以前より高額な収入が見込めると考えられており、スタジオ側はより莫大な制作費を投じて作品を製作するようになってきました。しかし、2013年にはスピルバーグとルーカスは昨今のハリウッド映画の現状を憂いており、ブロックバスター映画が増えすぎ、どれも同じような無難な作品になってきていることを問題視しています。高額予算のブロックバスター映画90年代の担い手である2人が発言していることは、自戒もこめているのかもしれません。

長くなりましたが、3D映画は観客離れの直接的な打開策になっているとは言い難く、更に映画界にとって一時的な特需はあれど、一部の超大作への偏りが進行しバブル崩壊がおき、継続的な映画界の救世主になるということは難しいようです。

 

 

★②ホームシアターの発展

ホームシアターの発展というと4Kテレビの普及や、大画面テレビの値下がりなどが挙げやすいですが、近年起こっている現象は他にあるように思います。

アップル社のitunesでの映画販売、レンタルを皮切りにホームエンターテイメントの主役がレンタルDVD、セルDVD等のパッケージ中心ではなく、インターネット配信が中心となりつつあります。

Googleyoutubeで映画の有料配信をいち早く始めており、

PCとAndroidスマホで楽しめる!YouTubeの有料映画配信サービスの魅力 日経トレンディネット

 

amazonも定額配信サービスを開始

アマゾンが映画の定額配信を日本で開始…ってマジですか? : ギズモード・ジャパン

 

先日、日テレが買収したhuluや

日テレがHuluを買う理由 Huluが日本事業を売る理由

 

日本未参入の好調サービスnetflix

Netflix、Q3実績でアナリスト予測を上回る。国内ユーザー130万人増、1株当たり利益0.52ドル | TechCrunch Japan

 

とプレイヤーが増えてきており、日本でもusenのu-nextやドコモのNOTTVなど参入が激化しています。観る方法自体は、xbox経由、タブレットスマートフォンのアプリ経由、スマートTV経由、appleTV経由と色々ありますが、どのサービスもネットに接続したデバイスやTVから簡単に返却忘れの心配なくすぐに観ることができます。現状、ドラマ作品などの充実もありyoutubeitunesの作品ごとの課金サービスよりも手軽な定額制サービスが普及しています。

とりわけ国土の広いアメリカ等では映画館まで車で2時間ということも珍しくなく家から出ることなく、すぐに観たい映画が観れるサービスは特にケーブルTV文化の国では受け入れられやすく、単に映画を大画面で観るというメリットだけでは、映画館から足が遠のいてしまいます。確かに、どうしても地域ごとにレンタル店や映画館の充実具合で映画体験に差が出てしまうので、映画体験の地域格差はなくなるというメリットは大きいです。

 

 

★③体験型映画体験という可能性

他の説明が長くなりましたが、『アナと雪の女王』の歌ってもいい(?)歌詞付き上映の話題に戻りたいと思います。映画館の醍醐味はもちろん大画面、大音響と答えて間違いないでしょう。しかし、それだけでは映画館に人の足が遠のいてしまうというのは前述した通りです。そこで、映画体験だけではない、映画館体験が鍵となると考えます。

最近では日本でも増えてきたマサラ上映というものがあります。インドでの映画鑑賞方法を参考に映画を上映する際に、映画に合わせて踊って歌って歓声を上げても構わない自由な上映システムのことを言うようです。この上映は限定的なイベント上映ではありますが、どの回も盛り上がっているようです。インドでは特別な上映でなくとも観客は大声で歌いだし、時には壇上に上がって踊りだします。(※インドに行って、この目で確かめました。)最近では、欧米のシステマティックなシネコンも普及していますので、減ってきてはいるという話ですが、街中の映画館では今も当たり前に行われています。聞く話に寄ると、観客がバカ受けしたギャグには映写技師がフィルムを巻き戻し、もう一度上映するという謎のDJのような映写技師のスクラッチプレイにも運が良ければ立ち会えるそうです。これが本当に楽しいのです。映画の種類にも依りますが、この映画体験は本当に楽しく、みんなで楽しんでいる、他者と楽しさを共有しているという感覚が堪らなく、インドで映画館を救う映画館体験とはこういうことだと身をもって体験しました。

現代の映画館というのは、他者の存在に気づきません。かつては、日本でもスクリーンに向かってかけ声をかける風景が見られましたが、今も横の人が泣いている…くらいは気づくかもしれませんが、基本的に現代の座席指定タイプのシネコンでは礼儀よく、大人しく、観ることが前提となっています。コメディ映画を観に行っても笑い声さえあまり聞こえません。しかし、時々イベントでの上映や熱狂的なファンがいる上映などでは大声の笑い声が響き渡り、その一体感は作品の思い出と共に非常に濃い映画館体験となるのです。六本木で『ハングオーバー』を初日に観た時は観客に外国の方が多く、ずっと爆笑が聞こえ、本当に楽しかった覚えがあります。最近では、オーディトリウム渋谷が史上最高に揺れたとの噂も聞こえる『テレクラキャノンボール2013劇場版』の上映があります。

 

 

 

 これだけの映画体験をしてしまうと、とにかく忘れ得ぬ置換できない体験となり、病み付きとなっているのが伝わってきます。

 

ここまでの熱狂でなくとも、映画館に通っていると通常上映で時折、上映後に《拍手》という現象が起きる場合があります。最初にこの現象が聞こえてきたのは『THIS IS IT』のような気がします。もちろんソーシャルメディアのおかげで可視可し、全国的に広がっただけで昔から続いているとは思います。マイケル・ジャクソンの死というファンにとって受け入れ難い出来事が起こり、ある意味、弔い上映のようになり、上映後の拍手は様々な土地で報告されたようです。この拍手は恐らくマイケル・ジャクソンありがとう!のメッセージの色合いが非常に強いと思いますが、この頃から良い映画の上映後に拍手が起こったというのを目にします。当時、拍手という現象はやはり体験した人は非常に印象的だったようで当時のブログやツイッター等で報告されています。

「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」は上映後に拍手が起こる、という噂は本当か? | プチ鹿島ブログ「俺のバカ」

 

『THIS IS IT』・・・映画館における拍手とは。 | Incidents(偶景)

 

映画祭や監督がいる上映では、拍手が上映後に起こることは少なくありません。それは本人や作り手に対するメッセージです。『This is it』の拍手はマイケルに対するメッセージです。拍手というのは、静かに映画館で観ていた人達が存在感を出し、他者を意識させるのです。その瞬間に、映画作品を観たという映画体験は知らない人達と映画を感動を共有したという映画館体験に変わるのです

その他にも、他者がいることによって体験できる様々な映画館体験があります。

それは、必ずしも良いものばかりではありません。マナー悪い客にイライラしたということや、笑いのツボが合わないから不快だったなどというものもあるかもしれません。しかし、特権的なものではなく、他者排除をしない世界との繋がりこそが映画の機能のひとつであると思います。それらの弊害がその人を映画館から足を遠ざける要因だとしたら1人で観るのが適しているのかもしれません。 しかし、幸福な映画館体験を体験し、病み付きになってしまった人達は、必ず今後もハズレの回があっても、映画館に足を運んでくれると考えます。

 

遠回りをしましたが、『アナと雪の女王』の歌詞付き上映は幸福な映画体験を小さい頃に経験することのできる非常に意義深い上映だと考えます。

もちろん、今回の上映はアナウンスが行き届いていなかったり、ナビゲートがうまくできていなかったり、全国規模で拡大しすぎたという問題はあったかもしれませんが、このような上映が定期的に行われることで、普段の上映にも拍手が起こったり、笑い声が聞こえてきたりと、映画館体験が日常的になってくると映画館離れに歯止めを多少かけることができるのではないかと思います。